東京圏でどの程度の被害が予測されるか――過小評価されたICRPモデルでも50年間に13万人の発がんと3万人のがん死 桐島氏のデータから、日本政府が放射線政策のベースとして採用している国際放射線防護委員会ICRPのリスクモデルを使って、大雑把ではあるが、東京圏での放射線被曝の被害がどの程度の規模になる可能性があるか推計することができる。 概数で、いま東京圏の人口を1000万人とし、この住民全員が、桐島氏らによる実測結果の放射線レベルで、毎年の追加被曝をする場合を仮定してみよう。格段に高かったはずの事故直後の初期被曝も、チェルノブイリでは外部被曝の3分の2として算入されている内部被曝量も捨象しよう。福島事故以前の東京の空間線量は、文部科学省のデータ(「はかるくん」)によれば0.036マイクロシーベルト/時だった。他方、2015年2~3月の桐島氏の全実測値の平均は0.3075マイクロシーベルト/時。事故による放射線量の上昇分は1年間に換算して約2.4ミリシーベルト/年である。被曝量と被曝人数をかけた「集団線量」としては、およそ2.4万人・シーベルト/年に相当する。 ICRP2007年勧告の表A.4.2に掲げられているリスク係数によれば、1万人・シーベルト当たりの過剰ながん発症は約1830人、そのうちの「致死性リスク」すなわちがん死は約450人である(掲載されている5つの数値の最大値と最小値の中央値、「遺伝性」は除いた)。 つまりICRPのリスクモデルでは、福島事故放出放射能への1年間の追加の被曝により、東京圏では生涯期間についてがん発症が約4400人増加し、がん死が約1100人程度追加的に生じる予測となる(付表1)。 50年間で計算すれば、セシウム137など長寿命放射能の50年間の減衰を考慮して、リスクを約6割とすると、およそ13万2000人のがん発症と3万2000人程度のがん死が予測されることになる。 これは東京圏の住民約1000万人だけでの話である。人口約4500万人の関東圏全体をとればこの4.5倍である。ICRPの著しく過小評価されたモデルで計算した場合でさえも、この程度の被害が出る可能性は十分に予測可能である。 実際の被害は約40倍。がん以外も広範囲の健康被害が予測。 関東圏全体で毎年約40万人、50年間で1200万人の致死リスク
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